No.6 「ピグマリオン効果について考える」

心理学の言葉に「ピグマリオン効果」 というのがある。
バーナード・ショーの戯曲「ピグマリオン」からとった名前だそうで、 大学教授が粗野な娘をしとやかな女性に変えていくという話。
その方法は、粗野な娘をいつも淑女のように扱うことで、その結果みごとに淑女に変ってゆく というもの。
ようするにピグマリオン効果とは、「人はそのように扱うとそのようなる」 ということ。
 
さて、そのように変身した淑女も魅力的だろうが、淑女として扱い続けた教授の努力は、 実際にはなかなか真似のできないことだろうと敬服する。
最終目標の「淑女」を思い描きながら、淑女として接し続けるエネルギーは大変なものだ と思ってしまう。
もっとも、純でない下心かなんかがあると話は別なんだろうが..

特に、日々の生活を共にしている身近な我が子、我が妻への対応となると、つい「ピグマリオン」 の「ピ」の字も忘れて、高尚で気長な(?)な戦術も忘れ去ってしまうのである。
悲しいかな、それが現実世界。
その点、ちょっと距離をおいた他人様となると、随分と状況が異なるには違いない。
その違いは何かと言えば、身近であるがゆえの遠慮のなさと甘えかもしれない。
ただ、それが生身の人間であり家族の証といえば言えなくもない。
とはいえ、秘めた大構想を描いて「ピグマリオン」に挑戦してみようか..。

小学校6年生の時に、あこがれの先生から言われた一言は今も忘れない。
休み時間にストーブにあたりながら、
「○○君は『社会』が好きなんだね..」
それ以来、(そうか、オレって社会が好きなのか)と、一所懸命勉強した単細胞の少年。
これは、ピグマリオン効果そのものではないが、一種の合わせ技といえるかもしれない。 

(2001年記)