No.4「瀬古選手よありがとう」

誰にでも忘れられないシーンがある..。
ジミ、ジミ、ジミなスポーツは、マラソン。マラソン。
と、嘉門達夫の「ジミー&ハデー」に出てきそうな文句ですが、ただ黙々と走る だけの、地味といえば地味な陸上競技。
ほんとは、一番長くブラウン管の主人公になるチャンスがあって、自信のある選手は最高に華々 しいスポーツかも知れません。

瀬古選手がまだ現役のころ、確か福岡国際マラソンだったと思います。
故障の後か何かの試合で、あまり期待もしていなかったのですが、意外に順調に走り続けました。
後半、ずっと2位をキープして、最後はあのイカンガー選手との一騎打ちになりました。
そして、競技場に入って最後のコーナーで目をみはるスパートをかけたのです。
唇のあたりが振動で震えながら、唾が泡のようになって走る宿敵イカンガーの後方から追いつき並んだのです。
そして、みるみる間隔を広げて、栄えあるある月桂冠をかぶることができたのであり ます。
私は、瀬古選手の驚異のラストスパートシーンが忘れられません。

マラソンの2時間ちょっとの時間を見るたびに、ゴール際になると なぜか胸の熱くなるものがあります。
ただ走るだけ。しかも他人が走っているのを見ているだけなのに..
結構単純なものに感激するものなのです。
考えてみると、あのときが瀬古選手の絶頂期であった気もします。
ロス五輪では絶対に勝ってほしかったのに 、残念ながら勝利の女神は彼には微笑みかけなかったのであります。