No.8「粗にして時折、華あり」

西新橋にある「江戸銀」という寿司屋に行って来ました。
友人の弟さんが板前さんをやっていて、その友人を含め三人で出かけたのであります。
いつ行っても、そこの美味しさは格別ですが、この日もそれはそれはサービス満点の特別? メニューに感激したものです。

まず、塩辛。
塩辛なのに少しも塩気が感じられないのであります。
しかも、当たり前ですが「塩辛」の味がちゃんとしていて..。
次が酢の物。胡瓜とわかめ。ここまではどこにもありますが、これに河豚の皮が加わって、 これが何とも言えぬ歯ざわり、舌ざわりなのであります。
“こりこり”と“しゃきしゃき”の中間の感じでしょうか、うまく表現が出来ません。
まあるい大きな皿の上には、これまた当然のことながら築地市場から仕入れてきたばかりの 新鮮な大トロ、ハマチ、ホタテ、赤貝、シャコ、鯛などがタンマリと乗っているのです。
別のさらには、穴子の刺身。

昔話や四方山(よもやま)話に花が咲き、だいぶ徳利の数も多くなってくると、 やがてついに、にぎりの登場。
私のような庶民には、寿司屋と言えば、ハナからこれを目当てで出掛けるものですが、 ここは何とも特別の状況にして、贅沢のし放題。
数あるネタのなかでも、厚焼き玉子は、厚さが3センチはあるびっくり“ぎょく”なのであります。
当然味は言うに及ばず。
エビなんぞは、頭付きの刺身でありまして、頭と身を箸で切り離し、そのとろけるような 身の部分を食べたあと、
「これお願いします」
と言えば、ほどよく焼いて出してくれ、その香ばしさといったらたまりません。

「ああ、生きてて良かった」
などとしみじみ全身の力が抜けてゆくような有り様で..
しかし、この感激は、日頃の粗食あればこそ(?)と感じたりもいたしました。
さらに、片手の平を広げたよりもまだ大きい、鯛のお頭焼きが登場。
鯛は、本当に凄い魚です。魚の王様と言われる所以をこの場でも実感しました。
歯ごたえのある身と噛むほどにうま味の出るあの締まりのある肉。
女房にと頂戴した、にぎりの折りをぶらさげて、深夜の帰宅とあいなりました。
ああ、満足。満足。持つべきものは友かな。(たまには、このようなこともあっていいかなと..)