No.4 「大晦日もハプニング」

それにしても2000年は、公私ともに本当にいろいろな出来事があった。
その最後を飾るにふさわしい(?)大慌てのハプニングで1年の締めくくり。
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年末年始の鎌倉は、道路交通規制で自動車は身動き大変との情報で、 一家5人で初めての電車旅行となった。
重い荷物をさげて、横浜のみなと未来21、コスモワールドの大観覧車など で遊んだあと、鎌倉の会社の保養所に到着。

お茶を飲んで一休みした後、1年間の垢を落とし、のんびりと湯に浸かろうかと、 男ひとり地下の浴場へ向かったのである。
お湯にはゆっくりと入りたいのが心情であるが、あいにく誰もが狙う夕方の時間帯。

ところが、ドアを開けてみるとスリッパはひとつだけ。これはラッキーである。
先客の脱衣かごには浴衣があった。
俺も浴衣に着替えればよかったかと思いつつ、裸になってタオルひとつを持ち、 浴場のガラス戸を引いて入ったのである。

眼前の湯船は誰も見えず、洗い場で体を流しているひとつのかげがあり。
めがねを外しているので、ピントはいまひとつ定まらないものの、 何となく体つきが丸いような..
髪の毛も長いような..
それに肌の色も白いような..

私が、「あれぇ!?」という疑問の声を思わず発すると、
「きゃー」とも、「ぎゃー」とも聞こえる先客の声。
ガーン!ようやく、事態を認識した次第。
「すみません!間違えました!..すみません!」
何を血迷ったか、女性風呂に間違えて入ってしまったらしい。
大慌てで脱衣場に戻りズボンをはこうとするが、こんな時に限ってズボンになかなか足がうまく通らないものである。
こんな所で、痴漢呼ばわりされては一家の大黒柱たる者、一生の不覚。
会社中に知れ渡ったら、生き恥をさらさねばならない。
こうしている間にも、次の女性が現れたら一貫の終わりではないか。
転倒しそうになりながら、ようやく通ったズボンのチャックも上げ切らぬまま、 上半身も裸の状態で、衣類を丸めてとにかく外へ飛び出したのである。

(いやー、まいった!)
隣の暖簾へ、衣類を抱えて入ろうとしたが、
念のため..風呂の入り口を確認すると、
なんと夢かうつつか幻か、「女風呂」とあるではないか。
すると、今出てきた方は???
看板を確認する作業が出来たことは不幸中の幸いであった。そのまま隣の風呂場に駆け込んでいたら、 更にとんでもない事態になっていた可能性が高い。
想像するだに、ドッキリものである。決して、ニンマリと鼻の下などが長くなるような状態ではなかったのである。

もう一度戻って、入り口の看板を確かめると「男風呂」と鮮明に書いてある。
してみると、間違えたのは先客の女性だったのだ。
ある意味、ほっと一安心するとともに、どっと疲れがでてきた。
今度は、間違いを教えてやらなければならないのだ。

慌てた私は、上半身裸のままで、恐る恐る浴室の入り口から首を突っ込み、
「こちらは男風呂ですよ」と大声で叫ぶのとほぼ同時に、
彼の女性も浴室から顔を出して「すみません!」と大慌ての様子。
そこから離れ、マッサージ機のある一画で衣服を着ていると、浴室の方から バタンという音がして人影が過ぎて行った。

その後、正真正銘の男風呂に戻り、ゆっくりと体を伸ばしたのである。
最後までついて回るハプニングに苦笑いするとともに、だんだんにハプニング が軟化しているようでもあり、来る新年に期待を寄せる大晦日であった。

(2001年1月記)