No.6「歌う妖精について考える」

 

「だいぶ前ですが、新聞のコンサートチケット発売広告欄に“歌う妖精 ちあきなおみ”とありました。
妖精といえば、モントリオールオリンピックで活躍したころのコマネチだとか、美少女コンテストなんかに出てきそうな 女の子をイメージするのです。
どう考えても、タンスにゴンで完璧にオバさんしているちあきなおみに“妖精”は合わないと思うのですが」
という質問にお応えして.. 

妖精、それはニンフ。にんふであって、妊婦ではない。
「森の精」として、昔読んだ本の中に、妖しげに登場していました。
神の遣いとして魔法のようなものをもっているかと思えば、そうでもなく、ティンカーベルのように案外 非力なところが共通点です。
妖精は、心の澄んだ人にだけ見ることができそうで、 悪に接すると、たちまち溶けてしまう、そんな弱さを感じます。
小さくて、白くて、羽が生えていて、声が非常に小さくて..そんなイメージでしょうか。

ちあきなおみが妖精にふさわしいかと言われれば、ちょっとか、大分か、違うでしょう。
それにつけても、涙ながらに感情を込めて歌った、「喝采」のイントロが 流れるたびに、胸の奥が高まり次第に心も共振してまいります。

いつものよぉ~にまくぅ~があ~き~ こおぉい~の う~ぅた うたう わたあぁしに~ 

あぁ、もういかん。胸が痛くなるぅ。
これは日本歌謡史の中でも、名作に違いない と思うのであります。
喝采が、聞く人の心に難なく入り込んでくる魔性は、妖精とどこかつながるものが あるのかもしれないと思ったりいたします。